抄録
本研究は,攻撃性の高いASDの生徒1名を対象にアンガーマネージメントDプログラムを実施し,グラウンデッド・セオリー・アプローチによる本人,その保護者,教員らの面接データの分析を通して,Dプログラムの効果に関する現象モデルを生成し,攻撃性の背景や社会適応が促されていくプロセスを明らかにすることを目的とした。その結果,攻撃性の背景には抑圧されたアンガー,気持ちを言語化する能力の低さ,居場所感のなさなどが示された。また,【自己理解の深まり】という現象の中心概念(カテゴリー)が抽出され,Dプログラムの第1~4課程でこのカテゴリーを経由することで他者への相談や他者理解の深まりが促され,向社会的行動が獲得されていくプロセスが確認された。さらにDプログラムへの動機づけの有無や周囲からの理解とサポートが,Dプログラムから得られる効果に影響を及ぼしていることが考えられた。