抄録
本研究は,行政版サポートファイルの有用性と課題の検討を目的とし,ファイルを10年以上運用する2市町の保護者611名と支援機関73校園を対象に質問紙調査を実施した。分析は,5件法を肯定的結果と否定的結果および「どちらでもない」の3群に分けχ²検定および残差分析を,自由記述には要約的内容分析法を用いた。結果,保護者と支援機関ともにおおむね2市町の有意差は認められず,結果を合算すると,保護者で肯定73.2%,否定5.9%,支援機関で肯定85.6%,否定2.1%となった。ファイルの引き継ぎや支援情報の共有化は,子どもの特性を理解することに役立ち,継続した支援は子どもが適応的に過ごすことや保護者の安心感にも寄与していた。このような効果は,自己理解支援の基盤ともなり,二次障害の予防にも有用であることが示唆された。課題は,支援者の理解の差や活用不足,移行先からのフィードバック,形骸化,支援者の負担が挙がった。