抄録
本研究の目的は,幼稚園年長児の音韻意識(以下,PA)の発達と成績が小学1年生のひらがな書字成績にどのように関係するか縦断的方法を用いて明らかにすることにある。調査時期1で,幼稚園年長児に対しPA検査(分解,抽出,抹消,逆唱の4種類×2,3,4モーラ単語各3題)を行い,調査時期2で,1の対象児が小学1年生になった7月と12月の2時点でひらがな聴写書字課題を行った。分析対象は69名(男子33,女子36)である。結果,PA検査課題の種類やモーラ数の違いにより難易度が異なり,ひらがな書字成績への影響も異なった。直音文字や直音単語の成績には「分解」が影響し,特殊拍文字や特殊拍単語には「逆唱」が強く関係した。PA検査の成績の合計が低位でかつ「分解」の成績の低位群は12月時書字成績も低位であった。以上から,1年生の書字成績の関係では,年長時のPAタイプとPA4課題全体の発達が重要であることが明らかになった。