抄録
本研究では,Kintsch & van Dijk(1978)の3層モデルに基づいて,各レベル(表層,命題,状況レベル)の文章理解力を測定できる小学生用の文章検証法課題を作成し,その発達的変化を検討した。その際,研究1では小学校2,4,6年生(N=114)を対象に,文章理解力とワーキングメモリ容量との関連を検討した。その結果,文章理解力とワーキングメモリ容量はいずれも発達とともに上昇するが,両者に関連はみられなかった。一方,研究2では小学校2,4年生(N=68)を対象に,文章理解力と語彙力との関連を検討し,両者の間に有意な正の相関が認められた。とりわけ,語彙力はテキスト情報と既有知識を統合して文脈を理解する状況レベルでの処理に影響を与えていたことが明らかとなった。子どもの語彙は読書を含むさまざまな経験によって高められることから,語彙力は既有知識を活用した文章理解を促進するものと示唆された。