抄録
視知覚の問題や光に対する過敏性の問題を抱えるとされるアーレンシンドローム(Irlen syndrome)者82名(平均年齢26.4±9.7歳,男性:女性=39:43)の,前庭感覚・触覚・固有感覚・視覚・聴覚・嗅覚・味覚・その他を含む計321項目の質問を集計し,自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder)併存の有無によるチェック数の差を検討した。その結果,計31項目に有意な差が見られ,自閉スペクトラム症を併存しない者は前庭感覚の問題に視覚の影響を受ける可能性が高いことがわかった。一方,自閉スペクトラム症を併存した場合はさまざまな感覚で問題が生じていた。アーレンシンドロームの視覚の過敏性が他の感覚の過敏性に影響を与える可能性についても示唆され,アーレンシンドロームの感覚に対する適切な理解や配慮の必要性が示された。