抄録
本研究の目的は,大学生の自閉スペクトラム症(Autism Spectrum:以下,AS)傾向と将来志向コーピングの能動的・予防的コーピングと精神的健康の主観的幸福感・ストレス反応との関連をみることだった。仮説1を,能動的・予防的コーピングが主観的幸福感を向上するが,その向上効果にAS傾向の高低で差異が生じない,仮説2を,AS傾向が高いほど能動的・予防的コーピングのストレス反応低減効果が大きい,とした。短期縦断式調査の結果,有効回答者は294名だった。AS傾向と能動的・予防的コーピングの各主効果項,AS傾向と能動的・予防的コーピングの各交互作用項を説明変数,主観的幸福感とストレス反応を基準変数とする階層的重回帰分析を行った。結果,仮説1・2共に能動的コーピングで支持され,予防的コーピングで支持されなかった。AS傾向が高い大学生の精神的健康向上に対する将来志向コーピングの有効性が示唆された。