景観生態学
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特集:景観生態学的手法による自然再生―丹沢大山総合調査の事例から―
丹沢山地におけるブナ林衰退の衰退要因の空間階層的関係の検討
山根 正伸田村 淳内山 佳美笹川 裕史
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2009 年 13 巻 1_2 号 p. 5-13

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抄録

丹沢山地におけるブナ衰退機構を検討するため,2002年から2004年にかけてマクロ,メソ,サイトの3つの空間スケールでブナ林を現地調査し,林分構造および衰弱と枯死の両方を含んだブナ衰退の現状についてGISを用いて定量的に解析した.マクロスケールの調査から,ブナ林のブナ混交率は大半が30%以下であり,樹高,平均胸高直径および立木密度を基準におおむね3つの地域に区分できることを示した.ブナの衰退は,東丹沢から丹沢中央の標高が1400 mを越える主稜線部にかけて進み,西丹沢や東丹沢の北側に位置する地区などで少なかった.衰退が進行する地区には,高標高地や平坦地のブナ林が多かった.また,平均日射指数が高いほど,もしくは土壌水分指数が低いほど,衰退が進んでいた.衰退が進行する丹沢山と檜洞丸の山頂一帯におけるメソスケールの調査からは,南から西向き斜面でブナの衰退が進む傾向が示された.また,林分調査の調査から,衰退が進む地点では,ブナ以外の樹種の樹勢低下やブナ高木の集団的な衰退を認めた.以上の衰退現況を踏まえた,丹沢山地のブナ衰退要因の空間階層的な関係を検討し,今後の研究課題を整理した.

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© 2009 日本景観生態学会
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