景観生態学
Online ISSN : 1884-6718
Print ISSN : 1880-0092
ISSN-L : 1880-0092
特集:景観生態学的手法による自然再生―丹沢大山総合調査の事例から―
丹沢山地における人工林荒廃の管理に関する景観生態学的解析
笹川 裕史鈴木 透山根 正伸
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 13 巻 1_2 号 p. 15-22

詳細
抄録

森林における景観パッチの空間パターンは,生物の生息状況に大きな影響を与えることが明らかになっており,生物多様性の維持には景観的な視点からの解析が要求されている.近年,私有の人工林では管理放棄が広範囲に認められ,パッチの質の低下に加えて生物の生息に好適とはいえない空間パターンの形成が進み,人工林景観における生物多様性の低下が懸念されている.本研究では,人工林管理政策の違いが将来的なランドスケープ構造にどのような影響を与えるのか,生物多様性保全の観点から評価を行うことを目的とした.森林管理ランクが明らかな神奈川県丹沢山地の民有人工林を材料として,異なる3つの間伐方針をシナリオとしたシミュレーションを行った.シナリオごとに時系列的に創出されるランドスケープの変化について,手入れランクの異なる林分パッチの形状,パッチ密度,近接性,分断度を測定し,生物多様性への有効性を検討した.その結果,現行の2種類の間伐方針に沿った森林管理はいずれも生物多様性の保全に効果的だと考えられたが,どちらがより効果的かは断言できなかった.

著者関連情報
© 2009 日本景観生態学会
前の記事 次の記事
feedback
Top