景観生態学
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特集「日本の海浜植生,その現状と将来への提言」
海浜植物のレッドリスト記載状況と保全上の課題
澤田 佳宏
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2014 年 19 巻 1 号 p. 25-34

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抄録

環境省第4次レッドリストには「塩湿地植物」の約46%,「海崖植物」の約37%の種が掲載されているのに対し「海浜植物」では約15%しか記載されていない.一方,都道府県版レッドリストには,海浜植物は塩湿地植物と並んで数多くの絶滅(地域内での絶滅)が記録されており,海崖植物よりも危険な状況となっている.特に,大阪・神奈川・和歌山・茨城などで海浜植物の保全の必要性が高いと考えられた.また,種別では,ハマハコベ,センダイハギ,ハマベンケイソウ,ビロードテンツキ,ウンラン,イワダレソウ,ナミキソウなどは環境省レッドリストでは注目されていないが,都道府県レベルでは各地で絶滅が進行しており,保全の必要性が高いと考えられた.海浜植物の地域絶滅の進行は,遺伝的多様性の低下(特定の地域系統の絶滅)を引き起こすおそれがある.また,メタ個体群構造の崩壊を経て「絶滅の渦」へと発展することも懸念される.日本の海浜植物の遺伝的多様性の実態やメタ個体群構造は,今後解明すべき重要な課題である.

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© 2014 日本景観生態学会
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