景観生態学
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原著論文
大山隠岐国立公園鏡ヶ成湿原の再生計画の検討
山田 諒日置 佳之
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2018 年 23 巻 1-2 号 p. 1-16

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抄録

鏡ヶ成湿原は,大山隠岐国立公園大山蒜山地域にある湿原である.しかし,長年にわたって,排水路による地下水位の低下の可能性があり,また,人為を排除する放置型管理の結果,湿原への木本植物の侵入がみられ,湿原生態系が劣化している恐れがある.そのため,2000年から湿原再生を目指した事業が行われてきたが,十分な成果を挙げるには至ってない.そこで本研究では,改めて同湿原の詳細な調査を行ったうえで,湿原の劣化要因を明らかにし,自然再生計画を提案することを目的とした.調査内容は,相対積算日射量,相対地下水位,水質とし,また,LIDARデータを用いた水文解析,植生調査を行った.その結果,水質は低茎湿生植物の生育に適した貧栄養の水であった.地下水位は,湿原面積の84%において湿原植生の成立が不可能なほど低く,乾燥化していた.日射量(地上から30cm)が50%以上で湿原植生の生育に適していたのは面積割合の18%であった.これらから,同湿原の約80%が低茎湿生植物の生育に適さない環境であると考えられた.植生は12群落に区分され,ごく一部で良好な湿生草本群落が現存していた.以上をもとに,同湿原を,自然再生のポテンシャルの高低によって3つに大きく区分した.さらに,現存植生,植生管理履歴の有無,ハイイヌツゲ群落の有無,水路や水みちの位置から8区域に下位区分し,それぞれについて自然再生に必要な措置を提案した.

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© 2018 日本景観生態学会
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