景観生態学
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調査研究報告
高知県大岐浜におけるクロマツ林から照葉樹林への遷移過程
森定 伸野崎 達也小川 みどり鎌田 磨人
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2020 年 25 巻 1 号 p. 75-86

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抄録

高知県土佐清水市の大岐浜の砂丘地では,クロマツ林からの遷移によって見事な照葉樹林が成立している.本研究では,放置されつつある海岸林の管理のあり方についての基礎的知見を得るため,植生調査,毎木調査により現在の森林構造を把握するとともに,年代の異なる空中写真判読から約40年間における植生変遷を把握し,遷移過程を推定した.

現在の植生配置は,汀線側から内陸に向かって,クロマツ-マサキ群落,ヒメユズリハ群落,タブノキ群落ホルトノキ群,タブノキ群落典型群が分布していた.これらの群落は,内陸側ほど樹木のサイズが大きく,生育本数が少なかった.また,群落を構成する樹種の多くがクスノキ科等の鳥散布型であった.空中写真の判読から,ほぼ全域がマツ枯れ後にクロマツ林から照葉樹林へと移行したことが確認され,汀線からの距離で植生遷移の進行速度が異なっていた.そして,将来的には,海側にマサキ-トベラ群集,陸側にムサシアブミ-タブノキ群集が成立すると考えられた.当地においては,鳥散布など自然過程での照葉樹の侵入により樹林が維持されると考えられ,クロマツを主体としない海岸林の成立・維持過程を検討するための貴重なモデルになる.

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© 2020 日本景観生態学会
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