景観生態学
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特集「竹林放置に関する問題とその対策」
竹林の拡大に関する景観生態学的研究―竹林の持続可能な利用に向けて―
真鍋 徹柴田 昌三長谷川 逸人伊東 啓太郎
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2020 年 25 巻 2 号 p. 119-135

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抄録

竹林は様々な自然的属性や社会的属性を伴った立地に分布してきたが,竹林の分布とそれら属性との対応関係は研究が行われた地域や年代によって様々であった.1980年代以降の竹産業の衰退に伴い,日本各地で放置竹林の増加や拡大が顕著となった.竹林の拡大は,斜面方位や傾斜角,竹林周辺の土地利用・植生など,様々な自然的属性を伴った立地で起きていたが,竹林拡大状況とそれら属性との関係も地域や年代によって様々であった.一方,竹林の拡大には,竹林や周辺植生の管理状況などの人為的要因が直接影響している場合もあった.竹林の現状に対する住民の意識を評価したところ,竹林の放置は認識しているものの竹林の拡大は気づいていない住民が多いこと,竹林に望む機能は都市部の住民と都市近郊域の住民とでは異なっていることが判明した.放置竹林では,生物の生息・生育地機能や炭素蓄積量といった生態系サービスが低下する傾向があった.このため,放置竹林の生態系サービスを向上させるため,竹材の新たな活用方法や,竹林の立地属性・かつての土地利用履歴などを考慮した効果的な伐竹手法が検討されている.さらに,優先的に管理を行うべき場所を選定する手法,地域の実情に応じた適切な竹林資源管理手法の評価・選択が可能なモデルなども提案されている.しかし,竹林面積が漸増した現在,全ての放置竹林の生態系サービスを改善することは不可能である.従って,竹林をグリーンインフラとみなし,地域の実情に応じた竹林の整備手法を見出し,生態系サービスを最大限引き出せるような維持・管理を長期的に実施する体制を構築することが重要であろう.

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© 2020 日本景観生態学会
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