本研究は北海道帯広市にある放棄後5年目の耕作放棄地において外来草本オオアワダチソウが二次遷移初期過程に与える影響を明らかにすることを目的とした.外来植物の侵入による農業地域の生物多様性への影響が懸念されている.オオアワダチソウの生育が多くみられる北海道の耕作放棄地における二次遷移初期過程の多様な植生の知見を蓄積することが重要である.調査地の二次植生は,平均樹高2.0m前後でシラカンバが優占する低木群落が形成され,その下層の多年草群落としてオオアワダチソウが優占していた.本研究対象地の多年草群落には本来多年草のオオヨモギが優占すると考えられたが,オオヨモギの被度は低い結果となった.近辺にオオアワダチソウが繁茂する耕作放棄地では,二次遷移初期過程の低木群落下層に,オオアワダチソウの多年草群落が成立し得ることが明らかになった.オオアワダチソウ以外の草本種として,メマツヨイグサが低い被度で生育していた.メマツヨイグサは,冷温帯の二次遷移初期過程の代表的な構成種である.また,多年草群落下層ではシラカンバの1年生の木本実生は認められず,遷移前期種の木本実生の定着は抑制されていた.この結果は,冷温帯における先行研究での二次遷移初期過程の傾向などと比べて大きな偏りはないことから,耕作放棄5年目の段階でオオアワダチソウの優占による偏向遷移は起きていないと考えられた.今後,調査地の遷移が進むなかで,オオアワダチソウの下層における遷移中後期種の木本の定着状況も把握することで,引き続き二次遷移過程の進行を明らかにしていく必要がある.