2012 年 61 巻 p. 151-169,en10
本稿は現段階での日本における台湾法制史研究について、土地法研究という観点から分析をなすものである。そしてそれは近代日本の土地法研究と中国法制史分野での土地法研究の議論を整理し、得られた知見に基づいて行なう分析である。
分析の結果、台湾の土地法制の歴史的展開や土地との関わり方の意識について、日本との類似性が認められることがわかった。また戦後の台湾において土地問題に関して様々な法的議論がなされている点にも共通性を感じる。
この点から、日本統治下台湾での土地法制の展開や、その中で見られた議論の更なる分析に基づき、類似性以外に、制度面での特殊性、また土地法観念などの特徴を明らかにすることが、台湾法制史研究の更なる発展につながるのではないかと思われる。そしてそれはまた法制史学、法社会学、民法学の結節点としての研究の展開を意味するのである。