保健医療学雑誌
Online ISSN : 2185-0399
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10周年記念特別号
保健医療学学会設立十周年記念の祝辞
中山 広宣
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2020 年 10 巻 3 号 p. 114-

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抄録

本学会は志を共にする諸先生のご指導とご支援により,平成22 年の2 月25 日に設立致しました.そして,10 年の歳月の中で初学者のみならず多くの研究者が研究論文としてその足跡を刻み,令和の時代を迎えることができました.初代会長そして第1回学術集会長として十周年を迎えられたことに感慨もひとしおであり,私の後任である渡辺先生をはじめとして関係者の皆様に心より感謝を申し上げます. 元号令和は万葉時代の太宰府の坂本八幡宮での歌会の一文から引用されたとのことですが,この坂本八幡宮は菅原道真公が左遷された太宰府政庁跡に隣接して私の日々の散歩コースでもあります.また,『和』というお言葉から『和をもって貴しとなす』と説いた聖徳太子が建立した福祉,医療,教育の礎である四箇院は本学会の理念と同様であり不思議なご縁を感じます. 聖徳太子は「四箇院の制」により,四天王寺に敬田院,施薬院,療病院,悲田院の四つの施設を設立したそうです.敬田院とは仏教精神を基本とした教育を行ない,施薬院とは病人に薬を施し,療病院とは言うまでもなく病院のことで病気を癒し,悲田院とは身寄りのない者や老人を救済する福祉施設のことです.日本最初の教育,医療,福祉の実践が行なわれたということに諸外国に類を見ない文化的・歴史的意味があると思います.また,聖徳太子は十七条憲法を制定し,その中で,性善説を基本に,人の生き方を説いています.先にも記載しましたが,「和を以て貴しとなす」というお言葉は,日本人であれば誰でも聞いたことがあると思います.他には,礼を守りなさい,人と意見が違っても怒ってはいけない,大事なことは多くの人と議論して決めなさい,などです.この思想は現代に引き継がれています.聖徳太子の教えは 日本人の思想や文化のルーツなのでしょう.そして,我々が探求するチームリハビリテーションの理念も全く同じだと考えます. 本学会設立の目的は,第一に狭義のリハビリテーションにとどまらず,人の生活(保健,医療,福祉,教育)に関係する方々の研究交流の場として,第二にその成果をもって社会に貢献すること,第三に学部卒業後,あるいは大学院終了後の研究継続を支援することにありました. 近年の保健・医療・福祉・リハビリテーション分野においては,EBMEBP ということは当然ですが,それに加えて,QOL やリカバリ(ー回復)という対象者の思いや主体性を大切にするという支援が望まれています.このような主観的命題は,数値で表すことは非常に難しいことであります.また,内的要因や外的要因によって絶えず変化します.そのため,「対象者中心の支援」と言うことは簡単ですが,今,本当に対象者中心の支援ができているかと問われれば断,言することは難しいと思います.しかし,多くの専門職がその領域を超えて,恊働研究や積極的な情報交流を行ない,社会を包含した統合的なチームリハビリテーションが推進されれば,よりよい生活支援が可能になると考えます.本学会が,「自分らしく生きる」という観点から,改めてリハビリテーションの本質を再考する機会,そして新知見の発見やリハビリテーション科学の向上に繋がり,さらには,私の造語ですが「人間生活学」という,人がより良い生活を創るための学問の交流の場として発展することを祈念いたします. 最後に,本学会が領域を超えた幅広い研究発表,情報交流の場として,数多くの方々に活用していただくようお願い申し上げます. これをもちまして,保健医療学学会十周年記念の挨拶とさせていただきます

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