2021 年 12 巻 2 号 p. 123-128
要旨 〔目的〕胸椎後彎の程度を把握することは,高齢者および腰部や頸部などに傷害を抱える者にとって重要である.脊柱アライメントの簡便な評価方法として,デジタル傾斜計を用いた評価方法が報告されている.しかし,脊柱を指標とした小型デジタル傾斜計による胸椎後彎角の測定方法に関する妥当性は報告されていない.そこで,本研究の目的は,脊柱を指標とした小型デジタル傾斜計を用いた胸椎後彎角の評価法に関する妥当性について調査することである.〔対象と方法〕対象は健常男性7 名とした.検者がデジタル傾斜計および Spinal Mouse を用い対象者の胸椎後彎角を2 回ずつ測定し,その平均値を算 出した.それぞれの測定結果をもとに,Pearson の積率相関係数を求め,2 種類の機器で測定した平均値の関連性を調べた.〔結果〕胸椎後弯角の平均値はデジタル傾斜計で30.5±2.8°,Spinal Mouse で36.3±5.1°であった.デジタル傾斜計およびSpinal Mouse で得られた値の相関係数は0.78 を示した.〔結語〕デジタル傾斜計による胸椎後彎角の測定は,Spinal Mouse との基準連関妥当性が認められ,臨床で活用できる可能性が示された.今後は円背をもつ高齢者での測定や他の傾斜計との比較なども行う必要がある.デジタル傾斜計は臨床で簡便に使用できる器具であり,今後の臨床応用が期待できる.