2024 年 15 巻 1 号 p. 8-16
【緒言】
超音波診断装置のStrain elastography機能を用いたStrain ratio(SR)計測は,音響カプラと対象物のひずみ値の比率から,生体組織の剛性を非侵襲的に計測できる.しかし,SR計測における走査法の違いが計測値に及ぼす影響は明らかにされていない.本研究の目的は,Real‐time Tissue Elastographyと超音波エコー用ファントム(以下,ファントム)を用いて,走査法の違いがSRの計測値に与える影響を検証することである.
【方法】
ファントム内に配置した異なる剛性をもつ独立した内包物(ヤング率100kPa, 200kPa, 400kPa)を計測対象とし,走査法は長軸走査と短軸走査の2条件とした.測定誤差の評価には,変動係数(Coefficient of variation: CV)を用いた.
【結果】
SR,内包物ひずみ値,音響カプラひずみ値のCVは,100kPaの内包物では各条件で同程度の値を示したが,200kPaと400kPaの内包物では,長軸走査に比べて短軸走査において高値を示した.Elastography画像を確認した結果から,200kPaと400kPaの内包物では,内包物のひずみ分布が不均一であることや,短軸走査では音響カプラの弯曲に伴い中央部に限局したひずみ分布を示した.
【結論】
剛性が高い対象物のSR計測では,長軸走査に比べて短軸走査におけるSRの測定誤差が増加することが示された.