2025 年 16 巻 2 号 p. 47-52
【緒言】本研究は,新型コロナウイルス感染症流行により,全国的な臨時休校と緊急事態宣言が発令された2020年から2023年5月に5類感染症に指定されるまでの期間を含む,2018年と2023年の5歳児の運動能力比較を行い,近年の幼児の運動能力の基礎データを構築することを目指した.【方法】A市およびB市の3つの保育園を対象に,保護者の同意を得た5歳児を対象に調査を実施した.測定項目は,身長・体重と7つの運動能力(25m走,ソフトボール投げ,捕球,体支持持続時間,立ち幅跳び,両足連続跳び越し,握力)である.統計解析にはMann-Whitney U検定および対応のないt検定を用い,差異を比較し効果量を算出した.【結果】25m走および両足連続跳び越しでは記録が有意に低下し,また体支持持続時間と握では有意に低値となり,小から中程度の効果量が示された.一方,身長,体重,ソフトボール投げ,捕球,立ち幅跳びにおいては有意差が認められなかった.【結論】本研究の結果は,新型コロナウイルス感染症パンデミック時の身体活動制限が幼児期の運動発達に影響を与えた可能性を示唆している.特にプレゴールデンエイジとされる幼児期は,多様な運動経験が重要であり,その不足が長期的な運動能力の発達に影響する可能性がある.コロナ禍後の運動機会の確保が,幼児の健全な成長を促進する鍵となることが示唆された.