2025 年 16 巻 2 号 p. 53-59
【緒言】本研究では,他動運動中に生じる伸張反射によるひっかかり(Catch)について,Catchを誘発する他動運動角速度とCatchの大きさから閾値の同定を試みた.また,運動開始位置の違いがCatchの出現角度と大きさに及ぼす影響を観察した.【方法】対象は痙縮のある地域在住の片麻痺者6名.肘関節最大屈曲位,および中間位からの伸展他動運動中に生じるCatchの他動運動角速度を慣性センサで記録した.他動運動角速度は主観的なCatchの有無による上下法で調整し,各対象者,各条件,20試行実施した.他動運動角速度とCatchの大きさから閾値を決定し,閾値レベルのCatch試行を分析した.【結果】全例,全条件で閾値レベルのCatch試行が同定された.運動開始位置の違いによってCatch出現までの運動量,Catchが出現する位置に有意な差は観察されたが,Catchが出現する相対的な角度とCatchの大きさに有意な差はなかった.【結論】他動運動角速度とCatchの大きさから閾値を同定できたことから,閾値を基準として他動運動角速度を統制したCatchの観察が可能であることが示された.運動開始位置はCatchの出現する角度に影響を及ぼすが,相対的な出現角度への影響は観察されなかった.このことから,相対的なCatchの出現角度は運動開始位置に影響を受けにくい定量的な指標になる可能性が示された.