2014 年 21 巻 p. 126-151
2004年4月に地方独立行政法人法が施行され,地方公共団体は公立大学法人化の是非が選択可能になった.2011年度現在,全国81の大学のうち58大学が法人化している.本稿は,全国の公立大学を対象に計量モデルを用いて運営における費用効率性を分析し,法人化の是非が,さらに,法人組織体制の具体的な中身が費用効率に影響を与えるのか検証した.公立大学は学部・研究科構成や規模などをはじめ大学ごとの特性が多様であり,すべての公立大学を対象にした実証分析は容易ではない.しかし,法人化の目的の一つが大学の自主自立性を活かしたガバナンス体制のもとでの効率的運営を目指すことにあり,地方公共団体の裁量による法人組織の弾力的な制度設計が可能である点を考慮すると,公立大学についても,法人化および法人組織の運営体制が運営の費用効率性にどのように影響しうるのかという点に焦点を当てた客観的な分析が行われるべきであろう.公立大学および法人を対象に確率的フロンティア費用関数を推定し費用効率性の要因分析を行った結果,法人移行によって大学運営の費用効率が一律に高まるという仮説は統計的に支持されなかった.しかし,公立大学法人を対象に組織の内部構造の違いに着目して同様に分析した結果,学長と理事長を別に配置していること,学長が民間出身であること,経営審議会における学外委員比率が高いことなど体制や取組次第では費用効率を高める可能性が示唆された.