2014 年 21 巻 p. 106-125
本稿では,すべての医療費を共同安定化事業の対象にする国民健康保険(以下,国保)の財政運営の都道府県単位化が市町村の国保特別会計に与える影響をシミュレーションによって定量的に明らかにした.得られた主な知見は次の通りである.
都道府県単位化によって,共同安定化事業拠出金の按分に被保険者割と医療費実績割とを用いる方法では拠出超過団体数が現在よりも増加する一方で,按分に被保険者割と所得割とを用いる方法では拠出超過団体数が減少する.
また,財政運営の都道府県単位化前に拠出超過であった保険者で都道府県単位化後も拠出超過になる団体数は全体の21%になり,逆に都道府県単位化前に交付超過であった保険者が財政運営の都道府県単位化後も交付超過になる団体数は全体の25%になる.
さらに,財政運営の都道府県単位化によって被保険者の保険料(税)負担の格差はおおむね縮小し,政策目的の一つである保険料(税)の平準化は実現するが,県によっては共同安定化事業拠出金の按分方法や第二号調整交付金の交付基準によって保険料(税)の平準化が実現しない可能性がある.シミュレーションの仮定からも明らかなように,被保険者の保険料(税)の負担増によって保険料(税)の平準化が実現する.これが財政運営の都道府県単位化による保険料(税)の平準化の内実である.