日本地方財政学会研究叢書
Online ISSN : 2436-7125
研究論文
都区財政調整制度の区間財政調整
星野 菜穂子
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2016 年 23 巻 p. 55-77

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抄録

 本稿では,都区財政調整制度における2000年度以降の区間財政調整の実態を検証し,分析結果にもとづく考察を行った.特別区財政調整交付金をつうじた調整が図られた結果,一般財源総額の区間格差はほぼ安定的に推移しているが,1人当たり額では格差縮小がみられている.これは都心4区の優位性があくまで相対的にではあるが低下していることを示すものである.2007年度の税源移譲にともなう特別区税の格差縮小もあるが,普通交付金の需要額算定も民生費需要の増大とともに人口規模の大きい周辺区に配分のいく構造になっている.そもそも都心4区は税源の集中度が高く,交付金は不要かわずかとなっているが,このような状況に対して都心区の一部から「都心区需要の算定充実」等の要求も示されている.人口規模の小さい都心区が交付金の拠出を多く賄う制度において,円滑な制度運営のためには都心区への配慮が重要になっていくことも示唆される.また交付金原資が本来は市町村税であるという性格は,この制度に対都および区間の対立軸を植え付けている.拠出に対する「還元率」の低い都心区で普通交付金に代わり特別交付金が「還元」の役割を一部担っている.これは特別交付金における都心4区の割合の高さにも反映されており,一般財源格差にも影響していた.

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