日本地方財政学会研究叢書
Online ISSN : 2436-7125
研究論文
合併自治体の財政調整基金に関する実証分析
宮下 量久鷲見 英司
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 24 巻 p. 125-149

詳細
抄録

 本稿では,平成の大合併後の合併自治体による財政調整基金の積立状況を明らかにしたうえで,合併自治体が合併算定替の縮小や期限切れによる交付税削減を前に,合併算定替によって増加した普通交付税を財政調整基金に積み立てたのではないかという仮説を定量的に検証した.具体的には,合併算定替による普通交付税増加額を独自に算出し,合併算定替依存率(合併算定替による普通交付税増加額/標準財政規模)などを説明変数,財政調整基金比率(財政調整基金残高/標準財政規模)の前年度からの差分を被説明変数としたパネルデータ分析を行った.

 その結果,合併算定替依存率の高い自治体ほど将来の財源対策として財政調整基金を積み立てており,その傾向は合併算定替の満額交付期限が近いほど顕著であった.また,合併町村では,合併算定替によって増加した普通交付税が合併都市よりも多く財政調整基金に充当された.この背景には,合併町村の合併算定替依存率や普通交付税依存率は合併都市よりも高いことなどが影響したと考えられる.つまり,合併町村が合併算定替による普通交付税増加額を将来の財源対策として財政調整基金に優先的に積み立てた理由には,合併算定替依存率が高い合併町村ほど合併算定替の縮小や期限切れによる交付税削減の影響が甚大であることや,財政基盤が脆弱であることなどが挙げられる.

著者関連情報
© 2017 日本地方財政学会
前の記事 次の記事
feedback
Top