日本地方財政学会研究叢書
Online ISSN : 2436-7125
24 巻
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研究論文
  • 石田 三成, 當銘 めぐみ
    2017 年24 巻 p. 101-124
    発行日: 2017年
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

     平成18年の給与構造の見直し以降,地方公務員の平均給料月額は総体的に抑制基調で推移している.しかし,公務員給与の低下がもたらすデメリットのひとつと考えられる汚職の発生について十分な検討が重ねられてきたとは言い難い.

     わが国において公務員給与と汚職を扱った研究は皆無といってよいが,海外では多くの実証研究が存在し,それらの分析によれば,公務員賃金が高いほど汚職が減少することが指摘されている.そこで,本稿では,海外での研究を踏まえ,わが国でも地方公務員の給与水準と汚職との間に関係性が見られるかを検証し,また,汚職の再発防止策が有効に機能しているかもあわせて吟味した.

     分析の結果,市部では,給与水準が高い団体ほど汚職事件及び汚職事件のうち横領事件の発覚確率が低下する傾向が見られた.しかし,仮に汚職事件や横領事件の発覚確率がそれらの発生確率と同一視できたとしても,汚職や横領の発生を抑制する効果は非常に小さいことが示された.また,再発防止策のうち事務執行方法の改善は,汚職事件及び横領事件の発覚確率の減少に寄与することが判明した.他方で,町村部では,給与水準や再発防止策の有無は汚職事件の発覚確率に有意な影響を与えていなかった.見方を変えれば,地方公務員給与の削減によって汚職の発生が懸念されたとしても,その程度は限定的であり,再発防止策を充実させることで汚職を防ぐことができると思われる.

  • 宮下 量久, 鷲見 英司
    2017 年24 巻 p. 125-149
    発行日: 2017年
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

     本稿では,平成の大合併後の合併自治体による財政調整基金の積立状況を明らかにしたうえで,合併自治体が合併算定替の縮小や期限切れによる交付税削減を前に,合併算定替によって増加した普通交付税を財政調整基金に積み立てたのではないかという仮説を定量的に検証した.具体的には,合併算定替による普通交付税増加額を独自に算出し,合併算定替依存率(合併算定替による普通交付税増加額/標準財政規模)などを説明変数,財政調整基金比率(財政調整基金残高/標準財政規模)の前年度からの差分を被説明変数としたパネルデータ分析を行った.

     その結果,合併算定替依存率の高い自治体ほど将来の財源対策として財政調整基金を積み立てており,その傾向は合併算定替の満額交付期限が近いほど顕著であった.また,合併町村では,合併算定替によって増加した普通交付税が合併都市よりも多く財政調整基金に充当された.この背景には,合併町村の合併算定替依存率や普通交付税依存率は合併都市よりも高いことなどが影響したと考えられる.つまり,合併町村が合併算定替による普通交付税増加額を将来の財源対策として財政調整基金に優先的に積み立てた理由には,合併算定替依存率が高い合併町村ほど合併算定替の縮小や期限切れによる交付税削減の影響が甚大であることや,財政基盤が脆弱であることなどが挙げられる.

  • ――個別自治体の寄付受け入れデータによる実証分析――
    西村 慶友, 石村 知子, 赤井 伸郎
    2017 年24 巻 p. 150-178
    発行日: 2017年
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

     本稿では,ふるさと納税(寄付)における,個人のインセンティブに関する実証分析を行った.その結果,寄付者の行動要因としては,小規模地域において,財政的に恵まれない地域に寄付しようという利他的要素はあるものの,最終的に,どの自治体を選択するかの決め手は,寄付することで得られる特典・特産品等に左右される可能性が高く,利己的な要素もあること,さらに,特典がない場合には,使途説明など,地域にどのように貢献するのかが明確な地域に寄付している傾向が見られ,利他的な要素があることが明らかとなった.

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