日本地方財政学会研究叢書
Online ISSN : 2436-7125
研究論文
地方税の偏在是正をめぐる制度形成過程の分析
——財政調整手段としての地方譲与税——
細井 雅代
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2021 年 28 巻 p. 65-88

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抄録

 本稿では,2008,2014,2019年度に実施された地方法人課税の偏在是正措置について振り返り,財政調整手段としての地方譲与税の意義を検討する.地方税の偏在是正のために,地方法人課税を国税化し消費税を地方消費税に振り替える税源交換を地方側は求めた.しかし,消費税の使途を高齢三経費に限ることが既定路線にあったことから国の財政当局は同意しない.そこで,地方税の一部を国税化し,地方交付税財源や地方譲与税にして,地方団体間で再配分する手法がとられた.2008年度改正では,法人事業税の譲与税化を講じたが,消費税率引上げを伴う税制改革実現までの暫定措置とされた.2014年度改正では,地方消費税率引上げによる水準超経費拡大に対する措置が必要であったことから,法人住民税の一部を交付税財源にする措置によった.さらなる偏在是正が求められた2019年度改正では,恒久措置として再び譲与税化した.地方譲与税を偏在是正の手段とする意義は,景気回復により拡大する水準超経費に対する財政調整としての役割,並びに経済活動の変化による地方法人課税の税収帰属の歪みを是正し,税制全体で地方法人課税を機能させる役割に見出せる.2018年度改正での地方消費税の清算基準の見直しは偏在是正措置には当たらないが,それが必要であった理由もまた,法人の組織形態の変化によって,従来の手法ではあるべき税収帰属にならないことに対する改正措置であった.

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