本稿では,2010年4月および2014年4月に導入された高等学校等就学支援金制度に付随する形で実施された,都道府県による私立高校生対象の就学支援事業が,私立高校の学納金の水準に影響を与えたかどうかを,2009~2016年度の都道府県パネルデータを用いて実証分析した.具体的には,生徒一人当たりの私立高校平均授業料もしくは入学料+施設整備費の平均値を被説明変数とするDIDによるパネル回帰分析を行い,都道府県による独自支援および国基準への加算支援の私立高校学納金への影響の有無を検証した.
実証分析の結果,参照年度(1)である2009年度に比して,新旧の高等学校等就学支援金制度のもとで,都道府県による独自支援および国基準への加算支援が実施された都道府県を処置群としたときのDID推定値が,プラスで統計的に有意となった.加えて,都道府県の就学支援の効果をDID推定値の大きさで比較してみると,新制度下の処置効果が旧制度下のそれを上回っていることが確認された.一連の実証分析は,高等学校等就学支援金制度に付随する形で実施された,都道府県による私立高校生対象の就学支援事業の実施により,私立高校は学納金引き上げに向かった可能性があり,また,旧制度から支援対象および支援額の積み増しが実施された新制度下において,私立高校による学納金引き上げの傾向はより顕著になったことを示唆するものと解釈できよう.
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