2025 年 35 巻 1 号 p. 1-7
シアノバクテリアの一種であるスピルリナは,その豊富な栄養特性により知られ,さまざまな産業分野での応用が期待されている.この微細藻類を効率的に栽培するには,生息環境の理解に加えて,生産環境に適した在来種の単離が重要である.本研究では,ジブチ共和国において栽培に適したスピルリナ株の単離と生産条件の確立を目的とし,ジブチとエチオピアの国境に位置するアルカリ性ソーダ塩湖であるアッベ湖の調査を実施した.その結果,アッベ湖は高温,高導電率,アルカリ性pHといったスピルリナの生育に最適な条件を備えていることが明らかとなった.調査対象とした7地点のうち4地点で,螺旋形態の微細藻類が観察された.これらの地点から採取した水サンプルから藻類を分離・培養した結果,スピルリナの培養に用いられるSOT培地をアッベ湖水で1/10に希釈したLAB培地において,安定して成長することが確認された.さらに,16S rRNA遺伝子の配列解析により,この螺旋形態の藻類は商業的に広く利用されているスピルリナ種であるArthrospira platensisと同一種であることが判明し,本株をArthrospira platensis LAB1と命名した.本研究成果は,アッベ湖に由来するスピルリナの存在を明らかにするとともに,当該藻類が多様な産業分野に応用可能であることを示唆しており,今後の実用化に向けた基盤的知見となることが期待される.