メディア・英語・コミュニケーション
Online ISSN : 2436-8016
Print ISSN : 2186-1420
Cognitive Hierarchy in AI-Assisted Subtitle Translation Paraphrasing Judgments: A TILT-Based Study
南津 佳広金井 啓子吉田 国子春木 茂宏
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2025 年 15 巻 p. 63-86

詳細
抄録
本研究は、言語教育における翻訳(TILT)の枠組みの中で、学習者がAIツールを用いて日英字幕を作成する際、どのような認知的階層で判断を行うかを分析したものである。AIが流暢な出力を生成することは利点である一方、「客観性バイアス」を誘発し、学習者が基本的な文法・構文ミス(第1層)を見過ごす原因となり得る。日本の大学生27名を対象とした質的事例研究では、言語的正確性、関連性理論とスコポス理論に基づく語用論的機能、そしてVenutiの枠組みによる文化的適応を統合した3層認知モデルを適用した。分析の結果、低次層で失敗すると高次層の判断に悪影響を及ぼす「カスケード効果」が明らかになった。主な知見として、学習者が語用論的含意(第2層)を検出することに困難を示すことや、文化的ニュアンスが中立化されてしまう「文化的平坦化」(第3層)が生じることが挙げられる。学習者は表層的な流暢さを評価することから、より深く再文脈化することへと視点を移行させることに苦労することが多かった。本研究で提示したモデルは、AI支援翻訳における認知的課題を診断する枠組みとして機能することが示された。これらの知見は、批判的AIリテラシーを育成する上で重要な示唆を提供する。
著者関連情報
© 2025 一般社団法人 日本メディア英語学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top