2019 年 18 巻 4 号 p. 261-265
インプラント体の上顎洞への迷入が原因で上顎洞炎を併発し,二次的に硬膜下膿瘍に至ったまれな1例を経験したので報告する.患者は59歳男性で,左側上顎洞内の迷入インプラント体除去依頼のために当科紹介受診となった.近歯科にて57部へのインプラント埋入後に左側上顎洞内にインプラント体が迷入した.摘出手術を予定していたが,その前に意識消失のため救急搬送された.CTとMRIにて右前頭葉皮質に硬膜下膿瘍が認められた.迷入インプラント体が上顎洞炎を併発し,二次的に硬膜下膿瘍に至ったと診断した.抗菌薬点滴を行い,上顎洞の開窓術およびインプラント体除去を実施した.さらに開頭によるドレナージを実施した.最終的に起因菌は不明であったが,MRIより膿瘍の消失を確認し,患者は回復し退院となった.