インプラントに関する医療事故の判例を,事故発生の防止につなげることを目的とし,医療事故分析ツールであるP-m SHELLモデルを用いて事故の根本原因を検討した.
1993年から2017年11月までのインプラントに関する医療事故の判例について,オンラインデータベースと電子図書データを利用して収集し,P-m SHELLモデルに基づいて要因分析を行なった.
歯科,インプラントをキーワードとして検索して,抽出したインプラント関連の医療事故全10事例のうち,原告(患者)の請求が棄却されたのは2件で,その2件を除いた内容の内訳は,神経損傷が4件,咀嚼障害が2件,上顎洞炎が1件,口腔底血腫が1件,上顎洞穿孔が1件(重複あり)であった.このうち口腔底血腫は気道閉塞による死亡症例であった.最も多い事例は神経損傷であった.事故の原因はすべて患者以外に起因するものであり,医療従事者の要因や,安全教育やマニュアルの不備などヒューマンエラーにつながる要因が多かった.
医療従事者同士の意思疎通を図り,マニュアルを整備するなど情報が確認しやすい環境で,医療従事者の知識や技術の向上を図ることが事故防止に必要であると考えられた.
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