日本顎顔面インプラント学会誌
Online ISSN : 2433-5509
Print ISSN : 1347-894X
ISSN-L : 1347-894X
最新号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
巻頭言
総説
  • 大島 猛史
    2019 年 18 巻 4 号 p. 243-245
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/11/16
    ジャーナル フリー

     19世紀末に確立されたCaldwell-Luc法はつい最近まで鼻副鼻腔炎の手術的治療の中心として広く行われてきた.鼻内からのアプローチも試みられてきたが,当時の鼻内手術は狭くて暗い術野,出血,周囲の重要臓器の損傷のリスクのため十分な効果を上げてきたとは言えなかった.光学技術の発達した1990年代に内視鏡下副鼻腔手術が確立しCaldwell-Luc法による病的洞粘膜の可及的摘出から,副鼻腔の開放,換気排泄路の造設へと手術のコンセプトが転換することとなった.現在,内視鏡手術はさらに発展し,鼻副鼻腔炎だけでなく腫瘍などに適応拡大されている.

     保存的治療としてはマクロライド少量長期投与法が慢性副鼻腔炎に対する標準的治療となっている.これにより外科的治療の適応とされた鼻副鼻腔炎の多くが保存的に治療できるようになった.

     しかし,内視鏡下副鼻腔手術,マクロライド療法という鼻副鼻腔炎の二大治療が確立された中で,同時にこれらの治療で改善しない難治性の鼻副鼻腔炎も明らかになってきた.今後は鼻副鼻腔炎の分子病態を考慮した治療の開発が必要になるだろう.

原著
臨床研究
  • 今泉 うの, 吉田 和市, 簗瀬 武史
    2019 年 18 巻 4 号 p. 247-252
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/11/16
    ジャーナル フリー

     インプラントに関する医療事故の判例を,事故発生の防止につなげることを目的とし,医療事故分析ツールであるP-m SHELLモデルを用いて事故の根本原因を検討した.

     1993年から2017年11月までのインプラントに関する医療事故の判例について,オンラインデータベースと電子図書データを利用して収集し,P-m SHELLモデルに基づいて要因分析を行なった.

     歯科,インプラントをキーワードとして検索して,抽出したインプラント関連の医療事故全10事例のうち,原告(患者)の請求が棄却されたのは2件で,その2件を除いた内容の内訳は,神経損傷が4件,咀嚼障害が2件,上顎洞炎が1件,口腔底血腫が1件,上顎洞穿孔が1件(重複あり)であった.このうち口腔底血腫は気道閉塞による死亡症例であった.最も多い事例は神経損傷であった.事故の原因はすべて患者以外に起因するものであり,医療従事者の要因や,安全教育やマニュアルの不備などヒューマンエラーにつながる要因が多かった.

     医療従事者同士の意思疎通を図り,マニュアルを整備するなど情報が確認しやすい環境で,医療従事者の知識や技術の向上を図ることが事故防止に必要であると考えられた.

症例報告
  • 緒方 絹子, 田上 隆一郎, 楠川 仁悟
    2019 年 18 巻 4 号 p. 253-260
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/11/16
    ジャーナル フリー

     唇顎口蓋裂患者は,上顎劣成長や不正咬合などの審美的および機能的障害をきたすことが多く,インプラントを用いた包括的治療が有用である.今回われわれは,唇顎口蓋裂患者に対し,歯科インプラントおよび顎矯正手術を行い咬合機能の回復を得た1例を報告する.

     患者は48歳の女性で,歯性上顎洞炎,上顎劣成長,多数歯歯周病にて全顎的および審美的治療を希望し当科初診となった.唇顎口蓋裂に対し幼少期に数回の手術が施行されていたが,顎裂は残存し上顎劣成長の状態であった.インプラント治療に先立ち,根尖病巣を有した543 12345の抜去,自家脱灰象牙質とハイドロキシアパタイト(以下,HA)顆粒を用いた顎裂部骨移植およびソケットプリザベーションを行った.6か月後に上顎歯牙欠損部にインプラント埋入を行い,顎矯正手術のためにインプラント支持型プロビジョナルレストレーションを作製した.最後に両側下顎矢状分割術およびオトガイ形成術を施行し,咬合の安定を図ったのちに最終補綴物を装着し,患者の満足を得た.

  • 臼田 聡, 軽部 健史, 臼田 慎, 遠藤 友樹, 吉田 俊一, 石井 秀太郎, 道端 彩, 木津 英樹
    2019 年 18 巻 4 号 p. 261-265
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/11/16
    ジャーナル フリー

     インプラント体の上顎洞への迷入が原因で上顎洞炎を併発し,二次的に硬膜下膿瘍に至ったまれな1例を経験したので報告する.患者は59歳男性で,左側上顎洞内の迷入インプラント体除去依頼のために当科紹介受診となった.近歯科にて57部へのインプラント埋入後に左側上顎洞内にインプラント体が迷入した.摘出手術を予定していたが,その前に意識消失のため救急搬送された.CTとMRIにて右前頭葉皮質に硬膜下膿瘍が認められた.迷入インプラント体が上顎洞炎を併発し,二次的に硬膜下膿瘍に至ったと診断した.抗菌薬点滴を行い,上顎洞の開窓術およびインプラント体除去を実施した.さらに開頭によるドレナージを実施した.最終的に起因菌は不明であったが,MRIより膿瘍の消失を確認し,患者は回復し退院となった.

feedback
Top