施設間で医療情報の交換や共有を実現するための様々な方法が提案されている.しかし,そのほとんどは通信規約に関するもので,医学用語の標準化については,まだその整備の途についたばかりである.今後普及が予想される電子診療録の開発や施設間での診療情報の電子的交換に際して医学用語の標準化は必須であり急務である.このような背景の下にすべての施設で共通に利用できる標準用語集を編纂しようとする努力が行われているが,それよりもむしろ,施設内での用途や目的に応じて用語の表現形態にある程度の自由度を許しつつ,標準概念を核としてゆるやかに統合することが用語の標準化に対する現実的な解決方法である.そこで,施設間で情報を交換する際,施設の枠を越えて共通に利用できる標準概念と,施設内で使用する厳密な用語体系とを組み合わせた形で医学用語を交換する方法を考案した.この方法をMERIT-9の診療情報提供書とMMLの退院時サマリの病名記述に適用し,情報共有の観点からその有効性を確認した.