抄録
背景:保険診療における処置の算定は,処置料,薬剤料,特定保険医療材料料に掲げる所定点数の合算によって算定される.このうち薬剤料,特定保険医療材料料は,物品請求が関与するため,システム化が容易であるが,処置料は,実体のない“行為”に対する請求であり,システム化が困難であった.従来当院では,処置伝票による処置請求が行われていたが,ユーザーは診療記録との二重入力を余儀なくされたため,しばしば請求漏れが存在した.そこで新生児集中治療病棟の経過表の電子化にあたって,経過表の診療記録から処置行為を検索・抽出,処置請求情報を生成するシステム構築を目的とした.方法:基本設計は,1)診療記録マスタの各項目に医事コード欄を追加,2)保険請求が可能な項目にのみ医事コードを付与,他は空欄とする,3)診療記録(経過表)の入力完了後,処置請求欄に医事コードがある項目を抽出し処置請求を作成,とした.システムの評価は,2003年度1月に新生児集中治療病棟に入院した患者12名の電子化抽出による処置請求と目視抽出による手書き処置伝票との保険請求額を比較した.結果:システムによる処置保険請求13,493±12,653点,伝票による処置保険請求6,893± 6,075点であった(平均±標準偏差).考察:本システムは処置料の算定に有効であった.しかし医事システムのコード体系との整合性が困難,マスタ管理が煩雑,複雑な処置の保険請求に完全対応できない(例:心拍モニターが3時間以上・未満で保険点数が異なる)などの課題が残された.