抄録
病名漏れによる査定は病院経営上の大きな問題であり,レセプト提出前にチェックを行っている医療施設は多い.しかし,事後のチェックでは多大な労力が必要なだけでなく,適応外処方を完全に防ぐことは困難である.われわれは処方時にリアルタイムでチェックを行うシステムを作成して一部の薬剤で実験的に運用を開始した.平成18年から対象を拡大,平成21年からは2種の市販薬剤データベースを組み合わせる運用を経験した.
薬剤とその適応病名をコード化した公式のデータベースは存在しないため,当院では2社からデータを購入し,統合して利用している.両社とも添付文書の内容と標準病名マスターをマッチングさせているが両社の登録病名は少なからず異なっており,共に不十分である.このため,保険で認められているのにチェックされる薬剤があるという苦情が現場からは多く寄せられている.
平成21年8月から平成22年3月までの8カ月間に17万回のチェックがなされ,解熱鎮痛剤が最も多くチェックされた.本システムによりレセプトの査定率は減っているが,未だに病名数は不足しており,今後も継続的な追加を実施していく.