抄録
介護施設では認知症の予防・改善を目的としたロボットセラピーと認知症評価テストが実施されている.しかし,評価テストは「テスト」であることを意識するため,正確な評価が難しい.また,テスト自体に嫌悪感を抱く高齢者も多い.本研究では,被験者に意識されることなく認知症の進行度を計測・評価する「会話ロボットによる認知症評価システム」を目指す.
本論文では,既存の評価スケールを調査し,日常会話から認知症進行度を推定するための新しい設問方式を提案した.評価実験のため,改訂長谷川式簡易知能スケール(HDS–R)をロボットに実装した.被験者10名に対し,①提案方式と②HDS–Rによる認知症評価を行った.両方式について,被験者を認知症進行度に基づいて2群に分け,Mann-Whitney検定を行った.その結果,提案方式とHDS–Rの結果ともに5%の有意差が認められた.また,Spearmanの相関係数は0.77~0.65(P<0.05)となり,有意な相関関係も認められた.人による評価テストにて得られるHDS–Rスコアと試作システムにより得られるスコアの違いについて検討した結果,音声入力,音声認識,正誤判定における問題点が明らかとなった.