抄録
背景:電子カルテは患者の状態把握の上で必ずしも紙カルテより勝るとは評価されていない.医師の立場から診療情報の理想的な入力・表示様式を提案したい.
方法:医師の意見を基に理想像をまとめ,電子カルテを基軸とした補助システムを構築し理想像を具現化,同システムを用いた診療情報把握実験を行いその有用性を検証した.
結果:病歴情報については,主治医に負担をかけずに常に最新サマリーが提供される様式が,診断名は関連情報(たとえば「肺癌」に対しTNM分類や組織型など)を付帯できることが,治療歴は腫瘍,感染など関心領域に応じて薬剤,手術,放射線など関連治療行為が検査結果とともに同一時間軸上に表現される様式が理想であると集約された.これら機能を備えた補助システムを開発し,医師に対し実際の症例で診療情報を把握させる実験を行い,情報把握の所用時間,正確性が向上することを確認した.
結論:診療情報入出力様式の改善が診療の効率,正確性に寄与する可能性が示された.