医療情報学
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原著-研究論文
地域医療データバンクのレセプトデータを活用した病院選択行動のロジット分析
仁藤 慎也藍原 雅一関 庸一
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2013 年 33 巻 5 号 p. 243-251

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抄録
 地域医療計画において適切な病床数を計画するには,将来の患者数を少ない誤差で推定することが不可欠である.このためには居住地域ごとにどのような患者がどの医療機関の受療を選択するかを明らかにすることが必要である.本研究では,この患者の受療選択の構造を大規模な地域医療情報(地域医療データバンク)から明らかにする一つの方法を提案する.患者が受療する病院を選ぶにあたっては,対象医療機関の効用のみならず,自宅から医療機関までの道のり距離の影響が大きな影響をもつと考えられる.また,後者の影響は性別,年齢階層といった患者属性によりその効果が異なってくると考えられる.そこで,これらの影響を患者の病院に対する効用として多項ロジットモデルにより定式化する.これを地域医療データバンクのレセプト情報から推定することにより,患者の医療機関選択確率を推定することが可能となる.ある県を推定事例として,地域医療データバンクから主要10病院のレセプトデータを抽出し,当該県におけるがん患者に関する効用モデルを推定した.推定されたモデルの係数より,どの病院からも距離が離れている患者は,規模が最大の大学病院を選択するなどの傾向があり,また,高年齢層は自宅近くの病院に行く確率が高いことが確認できた.医療機関における将来の患者シェアを性年齢ごとに明らかにすることができれば,これと将来の人口動態推計を合わせることで,医療機関ごとの患者数を推定できることとなる.
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© 2013 一般社団法人 日本医療情報学会
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