2016 年 36 巻 5 号 p. 241-251
[背景・目的]オーダリングシステムや電子カルテシステムにはオーダ時の過誤防止,部門運用に沿った誘導,オーダ間の不整合防止などを目的としたチェック機能が実装されているが,アラート疲労による重要な警告の見落としが生じる可能性も報告され,チェック内容の評価が必要である.今回,アラートの頻度とその効果の検討を目的に調査を行った.
[方法]山口大学医学部附属病院で平成27年1月から半年間のオーダ時チェックのデータを前向きに収集し,調査を行った.
[結果]調査期間に実施されたチェック機能が設定されるオーダ種別のオーダ1,836,209件のうち,何らかのチェックがあった件数は実数で144,423件(7.7%)であった.オーダ修正が必須な“エラー”では部門運用やシステム上の制限による内容が大半を占めた.一方,修正なしでもオーダ登録可能な“ワーニング”は延べ93,301件で,同日の重複した処方や検査に対するチェックが65.4%を占めた.また,薬剤アレルギーや造影剤副作用に対するチェックは全処方・注射オーダ452,487件中702件(0.16%)で,うち501件(71.4%)は同効薬剤に対するアレルギーチェックであり,カルテレビューの結果,重複を除く449件中415件(92.4%)が修正なしに登録されていた.一方,同一薬剤アレルギーチェックがかかった95件中,カルテレビューで内容の変更やキャンセルが確認されたのは重複を除く87件のうち39件(44.8%)であった.
[考察・結論]今回の結果により,検査や処方の重複チェックなどは発生頻度が高く,また,修正率が低いものでありアラート疲労を来しうる状況と考えられた.今後,多施設で同様の検討を行い比較するなど,チェックをかけるべき内容とその有用性を再検討する必要がある.