2017 年 37 巻 1 号 p. 38-39
研究目的
医療情報技術の進歩に伴い,レセプトデータ,DPCデータなどの様々な医療情報が電子的に収集・分析されるようになり,医療の質の向上,医療政策の立案等に活用されているが,診療行為に関する情報が中心で,患者の状態や治療効果等に関する情報が十分に含まれているわけでないため,分析範囲に限界がある.日本外科学会を中心に手術症例を登録する事業が開始されるなど,医療分野毎にデータベースを構築する取組みが進められている.日本外科学会の取組みにおいて,消化器外科領域では,登録データに基づいたリスクモデルを用いて,手術を受ける患者の死亡率や合併症の発生率等の予測値を計算し,患者へのインフォームドコンセントやカンファレンスの際に使用され,心臓血管外科の領域では,初心者の大規模施設での手術を行った場合の成績が,ベテランの小規模施設での手術を行った場合の成績よりも良好であったことから,初心者に対する手術トレーニングも大規模施設であれば安全に遂行可能であることが示され,実施施設の集約化が推進されるなどの成果があった.社会保障制度改革国民会議,日本再興戦略等において,こうした学会等の取組みを支援する必要性が示されたため,平成25年度補正予算で3団体(自治医科大学・循環器疾患レジストリ研究拠点,一般社団法人National Clinical Database,日本放射線腫瘍学会)に対して,データベースに関する財政的支援が行われた.今後こうした取り組みを推進する上では,データベース構築に構築・運営する場合の課題等を明らかとする必要があるため,本研究において,1)学会等における症例登録事業の実施状況及び今後の実施に向けた検討状況について調査するとともに,2)今後のデータベースの効率的な整備・運営方法,活用方法等を検討することは,保健医療分野の情報化の推進を行う上で不可欠である.これまで,こうした取組みは行われず非常に意義のあるものである.