本研究は,医療文書内の単語を分析目的により階層化した構造を用いて,目的指向の単語の重み付けを支援する汎用的な方法論を検討する.単語分類階層は,論理否定の活用とICD-10コードに対応するランキングの医学関係情報の活用により,単語のカテゴリーをノードとして構成する.目的指向の重み付けのため,単語分類階層を重み付け規則の生成に活用し,カテゴリーに対して分析目的に基づいて重みを与えることで,カテゴリー間の順序関係を捉える.具体的には,単語の階層性とランキングの医学関係情報の活用という単語分類階層の2つの特徴から,3つの重み付け規則を生成し,階層が深く,論理否定に係らない,そして該当するランクが高い単語を分析目的に重要な単語として高い重みを付与した.目的指向の重み付けは,分析目的の1つである死亡予測の実験で有効性が示されたことから,提案する目的指向の重み付け方法論が有効であることが示唆された.本研究ではICD-10コードに対応する単語が分析目的に依存している重要な単語としたが,ICD-10対象外の単語に対しても,分析目的に類似的な依存性を求めるために,機械学習技術を活用することを考察した.本研究で提案した方法論や,重み規則により捉えられる単語のカテゴリー間の順序および単語と重みの辞書は,医療ビックデータ分析による知識獲得支援の促進への貢献が期待できる.