抄録
顎顔面リハビリテーションにおいて発話能力の評価は極めて重要である.我が国では単音節発語明瞭度検査が広く用いられているが,聞き取り検査に時間と労力がかかること,また人の耳による主観的検査であり,聞き取り検査者の能力によって結果が変化することが欠点である.そこで聞き取り検査を必要としない発語明瞭度検査法を開発する必要があると考え.本研究を行った.コンピューター音声認識技術を用いた発語明瞭度自動検査システムを開発し,健常者10人と上顎欠損患者17人の検査を行った.患者の検査結果は従来法による発語明瞭度検査結果と比較した.今回開発された発語明瞭度自動検査システムはどの被験者においても問題なく使用することができ,聞き取り検査を必要としないため検査後ただちに検査結果を得ることができた.健常者では三日間の測定結果に有意差は見られなかった.欠損患者では義歯なしの状態において自動検査システムの結果と従来法による発語明瞭度に強い相関がみられた.義歯ありの状態では相関がみられなかったが,これらの結果は発語明瞭度自動検査システムが,聞き取り検査を必要としない発語明瞭度検査システムとして患者の発話能力の評価に用いることができる可能性を示唆している.