原著
頭頸部腫瘍術後の顎補綴装置装着者において咀嚼運動が重心動揺に与える影響
2016 年 39 巻 2 号 p. 53-59
詳細
2016 年 39 巻 2 号 p. 53-59
要旨：目的：頭頸部腫瘍術後の顎補綴装置装着患者において，ガムによる咀嚼運動が重心動揺に及ぼす影響を調査することとした．
方法：被験者は頭頸部腫瘍術後に顎補綴装置を装着している患者17名とした．上顎に顎補綴装置を装着している上顎欠損患者11名（第1群）と，下顎に顎補綴装置を装着している下顎欠損患者6名（第2群）の2群に分けた．静的顎位（義歯によって習慣性咬合位保持している状態）と，動的顎位（義歯を装着しガム咀嚼を行っている状態）の2状態において，閉眼立位時重心動揺を平衡機能計測装置にて測定した．重心動揺の外周面積，左右方向最大振幅，前後方向最大振幅，総軌跡長を算出し，2つの顎位の状態をウィルコクソンの符号順位検定を用いて各群それぞれに比較した．
結果：第1群において，動的顎位で静的顎位と比較し重心動揺外周面積が有意に小さくなった（P＜0.033）．第2群においては，2つの顎位の間で有意差を生じなかった．
結語：上顎に顎補綴装置を装着している患者において，ガム咀嚼時に重心動揺が小さくなる傾向が認められたが，下顎に顎補綴装置を装着している患者には認められなかった．
