日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2003年度 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: G5-06
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G5:初期地球と隕石
エンスタタイト-Fe/SiO2水熱変成実験: コンドリュール水質変成再現の試み
*大西 市朗留岡 和重
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抄録
1.はじめに
 コンドライト隕石の主要構成物の中で、エンスタタイトは水質変成において最も変成されやすい鉱物の一つである。エンスタタイトの交代変成でできる鉱物は隕石のタイプで異なり、CMタイプではサーペンティン、CVタイプではスメクタイトである。昨年、我々はエンスタタイトを様々なpH(0-14)の溶液で水熱変成させ、サーペンティンあるいはスメクタイトの生成条件が溶液のpHに強く依存することを見出し、報告した。これまでの研究から、コンドリュール中で, Fe-Ni金属やNa、Siに富むガラスはエンスタタイトとともに選択的に変成されることがわかっている。従って、エンスタタイトとFe-Ni金属やガラスとの反応の過程・条件を知ることは、コンドライトの水質変成を解明する上で重要である。そこで、本研究では、エンスタタイトとFe,あるいはエンスタタイトとSiO2の水熱変成実験を行った。

2.実験方法
 合成した斜方エンスタタイト(OEn)粉末に、Fe粉末またはSiO2粉末を混合し、出発物質とした。各粉末の混合比は、OEn/Fe(あるいはOEn/SiO2)=9/1または5/5(重量比)とした。混合粉末と0.01N-、0.1N-、1N-NaOH溶液(pH=12、13、14)をそれぞれ金チューブに封入し(溶液/粉末=3.3(重量比))、テストチューブ型水熱合成装置を用いて、 1kb、300℃、保持時間7日の条件で実験を行った。実験試料の同定には主としてXRDを用いた。

3.結果と考察
 回収試料の分析により、溶液のpH、NaOH濃度が同じ場合、出発物質がOEn + Feでは、サーペンティンが、OEn + SiO2では、スメクタイトとタルクが生成しやすいことが分かった。これは、OEn + Feでは、Feの溶解によって溶液中の(Mg+Fe)/Si比が増加して、サーペンティンの生成が促されたのに対し、OEn + SiO2では、SiO2の溶解によって溶液中の(Mg+Fe)/Si比が減少し、スメクタイトやタルクの生成が促された結果と考えられる。また、出発物質が同じ場合、高pHかつ高Na(0.1N、1N-NaOH)の溶液でスメクタイトが生成しやすく、低pHかつ低Na(0.01N、0.1N-NaOH)の溶液でサーペンティンやタルクが生成しやすい。スメクタイトは、結晶構造中に層間イオンとしてNa+やOH-基あるいは構造水を多量に含み得る。この性質から、Na+濃度及びOH-濃度が高い、高pH溶液においては、スメクタイトが生成しやすい条件ができたのだろう。一方、Na+濃度が低く、かつ低pHの溶液では、スメクタイトの生成が抑制され、代わって結晶構造中に層間イオン等を含まないサーペンティンやタルクが生成した、と考えられる。
 以上の結果から,CMタイプ隕石の水質変成では、エンスタタイトとFe-Ni金属等のFeに富む鉱物が低pH溶液と反応したと考えられる。一方、CVタイプ隕石では、エンスタタイトとガラスなどのNa、Siに富む鉱物が高pH溶液と反応したのであろう。
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© 2003 日本鉱物科学会
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