日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2004年 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: G4-05
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G4:深成岩および変成岩
変成岩中のざくろ石の累帯構造への界面非平衡の効果:その基本的概念
*北村 雅夫
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キーワード: 変成ざくろ石, 累帯構造
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抄録
ざくろ石は、変成岩の主要構成鉱物であり、成長時などで形成される化学組成変動に伴う累帯構造(組成累帯構造)が残されている場合が多い。これらの累帯構造に残された組成変化を用いて、変成岩の P-T path の推定などが精力的に行われている。P-T path の推定の原理としては、界面平衡な成り立っていることが最も重要な点である。また、変成岩中のざくろ石の組成変化全体を、分配係数一定を前提としたRayleigh fractionation model などを用いて、説明されてきた。一方、単調な温度・圧力変化で且つ界面平衡あるいは分配係数一定という仮定では説明できない組成累帯構造も報告されている。ある場合には複雑な反応過程の設定、またある場合には変成圧力の変化によって説明されてきた。とくに、後者の場合には、それに見合ったテクトニックな運動を示唆することとなる。これまでの界面平衡あるいは分配係数一定というモデル以外の考察は、その理論的背景がなかったために行えなかった。ここでは、界面非平衡という新しい視点から、ざくろ石の累帯構造の成因を議論する。組成累帯構造は、界面平衡下での分別結晶作用で生じる組成変化を正であると定義すると、正累帯構造と逆累帯構造に大別できる。最近構築した界面カイネティックスに関する理論(Kitamura and Matsumoto: J. Crystal Growth, 260, 243-254, 2004)に基づいて、変成岩中のざくろ石の組成累帯構造の成因の解析を行った。その結果、変成岩中のざくろ石の累帯構造に関して以下のような事が明らかとなった:(1) 変成岩中のざくろ石は、界面非平衡の効果による逆累帯構造を形成し得る。(2) ざくろ石の逆累帯構造は、等温・等圧条件に近い場合に形成されたと考えられる。(3) 正累帯構造は、単調な温度・圧力変化のもとでは、広い条件下で形成され得る。(4) ざくろ石の逆累帯構造の特徴から、ざくろ石の形成反応への制約を推定し得る。以上の結果は、界面平衡あるいは分配係数一定というモデルで考察されてきたざくろ石の成因を新しい視点に基づいて再検討すべきであると共に、それらから推定されたテクトニックな運動等の提言も見直されるべきであることを示唆している。Keywords: metamorphic garnet, zonal structure, *Corresponding author: kitamura@kueps.kyoto-u.ac.jp
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© 2004 日本鉱物科学会
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