抄録
島弧における単一の火山あるいは火山群内でのアルカリ玄武岩とカルクアルカリ岩の共存の例は,利尻火山,阿武単成火山群,北部九州,カムチャッカ,西パナマなどで知られている.扇ノ山火山もその一つで,プレート内型玄武岩とアダカイト類似の安山岩が,時間的空間的に密接に伴って生じている.扇ノ山のその両者の成因的関連性を考察することは,他地域において共存するアルカリ玄武岩とカルクアルカリ岩の成因解明につながる.本論では,扇ノ山の西方約120 kmに分布する横田単成火山群と,扇ノ山の東方約25 kmに位置する神鍋単成火山群の玄武岩についても岩石学的,地球化学的な比較を行い,扇ノ山の下を中心としたマントルの東西方向の不均質性を議論した上で,扇ノ山火山活動の末期に噴出した玄武岩の地球化学的特異性とそのような玄武岩がカルクアルカリ安山岩と共存する過程について議論する.