抄録
阿武単成火山群,片俣地域の火山岩類はじめに 阿武単成火山群は,西南日本の日本海側に位置する第四紀の独立単成火山群で,大小約40の安山岩・デイサイトおよびアルカリ玄武岩質の単成火山からなる(Koyaguchi, 1986).片俣火山は,山口県むつみ村の北東部に位置する単成火山で,長さ約1kmの溶岩流と比高約80mの小規模なスコリア丘からなり,金雲母班晶に富むアルカリ玄武岩を産する.岩石記載と化学的特徴 片俣火山を構成する岩石は,一般に気泡に富む明∼暗灰色のアルカリ玄武岩である.岩石は,斑晶鉱物に橄欖石,単斜輝石,金雲母を持ち,石基はこれらの他に斜長石,燐灰石,不透明鉱物,ガラスを含む.特に金雲母斑晶は,自形性が強くオパサイト縁の発達したものと,自形性を欠きオパサイト縁を全く持たないものの2種類がある.また,溶岩流は,粒径数mmの金雲母,単斜輝石,橄欖石からなる暗色包有物や,花崗岩質捕獲岩などを包有する.全岩化学組成は,スコリア丘でSiO2 48.3wt.%,K2O 3.5wt.%,溶岩流は平均でSiO2 52.0wt.%,K2O 4.0wt.%の,アブサロカイト∼ショショナイト質の岩石である.また,溶岩流が高いSr(最大で1850ppm)とRb(最大で149ppm)含有量で特徴づけられるのに対し,スコリア丘の岩石はその半分程度の含有量である.SiO2含有量を横軸にとった組成変化図上で,様々な化学成分量が直線的に変化し,溶岩流とスコリア丘とで一連のトレンドを形成する.また,液相濃集元素と固相濃集元素の含有量を両軸に用いた図上でも同様の傾向を示す.考察 溶岩流とスコリア丘の岩石は,記載的には相互に類似し,また,マグマ混合を示唆する非平衡な鉱物組合わせを示さない.しかしながら,上記の化学的特徴は,両者を形成したマグマが一連の結晶分化作用によって生じたものではなく,マグマ混合によって生じたという事を示唆する.また,混合作用の端成分と思われる試料で,分配係数の似た成分同士の比(例えばSr/ZrやK/Nb)が大きく異なるので,溶岩流とスコリア丘のマグマは,化学組成の異なったマントル物質から生じたものと思われる.なお,スコリア丘を形成する岩石は,MgO/FeO*重量比(1.12)およびNi(181ppm)とCr(563ppm)の含有量が高いので,初生マグマに近い組成を持つと考えられる.文献 Koyaguchi (1986): Contrib. Mineral. Petrol. 93, 33-45.