日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2004年 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: G6-17
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G6:岩石・鉱物・鉱床学一般
藍晶石の超過剰アルゴン—15 Ga Ar/Ar age—
*板谷 徹丸宇留野 勝敏兵藤 博信加納 博御子柴 真澄
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抄録
アルミニウム珪酸塩鉱物(Al2SiO5)は結晶学的に3種の相(紅柱石、珪線石、藍晶石)を持つ。この単純な相は変成岩類の温度圧力条件の推定に用いられてきた。特に高圧相藍晶石の存在は中高圧変成岩の重要な情報を提供してきた。典型的な低圧変成帯(紅柱石ー珪線石型変成帯)である阿武隈山地(Miyashiro, 1958)から希ではあるが藍晶石が観察されてきた。 Kano and Kuroda (1968)は十字石と藍晶石の共生を見いだし、阿武隈変成帯の複変成作用を提案している。一方、Hiroi et al. (1998) はザクロ石中に藍晶石を見いだし、白亜紀の急激な圧力付加と開放を提唱している。藍晶石を含む岩石の露頭は希ではあるが川砂から十字石と藍晶石が多数見いだされており、バロー型変成帯の存在を示唆してきた。東北地方でのバロー型変成帯の探索を進める過程で北上山地の川砂からも十字石と藍晶石が多数見いだされた。しかし、現在のところそれらの鉱物を含む岩石露頭は発見されていない。日本列島にかつてバロー型変成帯が存在したかも知れないのであればその時代探索が重要な制約を与えると考える。北上山地の川砂から採集された藍晶石の単結晶を用いたAr/Ar年代測定は有効であると予想し年代測定を実施した。 北上山地の白亜紀遠野花崗岩類周辺の約500サイトの川砂の約30サイトから藍晶石を見いだした。いずれも十字石を伴う。主にシルル紀とされる氷上花崗岩類や壺の沢変成岩類が分布する南部地域に集中している。中でも大畑地域の一つのサイトに着目し、耐酸重鉱物分離法を用い、藍晶石を顕微鏡下で同定し分離を行った。5個の藍晶石結晶(長径0.6-0.8ミリ)をレーザー加熱法を用いて全融Ar/Ar年代測定を実施した。年代測定に用いた藍晶石の光学的な性質として消光角は25-29度で2Vxは78-89度である。得られた年代は7.7±0.4, 9.9±0.4, 11.1±0.4, 15.1±0.7, 16.3±1.5Gaであった。これらの年代は地球の年齢より2倍から3倍古い値である。地球上で形成された鉱物および岩石で地球の年齢より古いK-ArやAr-Ar年代を示す場合はそれらが過剰アルゴンを保持していたと解釈される。これまで、コラ半島の超塩基性岩から最大8Ga(Kaneoka, 1974)やザイールダイアモンドから6Ga(Ojima, et al., 1989)のAr-Ar年代が得られている。1969年以前にも地殻物質からかなりの過剰アルゴンが報告されている(Dalrymple and Lanphere, 1969)が今回の15GaのAr-Ar年代は世界で最も古い値を示す。世界最大量の過剰アルゴンを持つ藍晶石が発見されたことはその成因に特別な環境設定が必要である。 地球の年齢より古い超塩基性岩やダイヤモンドは低カリウム試料である。藍晶石も同様である。この場合、過剰アルゴンの存在が年代に大きく影響する。考えられる環境設定は次のような場合である。高カリウム鉱物が分解または再加熱されそれまで蓄積していた放射起源アルゴンが放出されアルゴン分圧の高い環境下で藍晶石が形成または晒される場合である。超高圧変成岩の断熱上昇過程でバロー型後退変成作用を受ける場合の特殊なケースが実際には想定される。超高圧変成岩にヒスイ輝石と藍晶石が存在するとき圧力低下でパラゴナイトに分解する。その後のバロー型変成作用で藍晶石が再結晶するときアルゴン分圧の高い環境設定が特殊なケースと言える。その場合、白雲母(フェンジェイト)が分解する高温状態で再結晶すれば効果的である。
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© 2004 日本鉱物科学会
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