抄録
部分溶融マントルにおいて、パーコレーション閾値がどこにあるかということは、初生マグマの組成を考える上で重要な問題である。マグマ発生のモデルとして、分別融解モデルとバッチ融解モデルが両端成分モデルとして重要である。これまで閾値は限りなく低いという見解と有意に高いという見解が対立してきた。いずれにしてもこれまでの閾値のコンセプトでは、ある値を越えると、それを超えた分だけのメルトが流出するという、いわば静的なものであった。これだとバッチ融解は発生しない。Obata and Takazawa (2004)はメルトと結晶固体の境界の界面エネルギーを考慮した組織平衡の問題と重力場における固体、液体の密度差から発生するメルト圧と固体圧の差を考えあわせて、上昇による圧力低下で部分融解が進行しつつあるマントルでパーコレーション閾値がダイナミックに変化し、その結果バッチ融解が実現する可能性を指摘した。
文献:Obata, M. and Takazawa, E. (2004)