抄録
近年の地震波トモグラフィの発展によって,東北本州弧のマントル-地殻構造を,詳しく可視化することができるようになった.地質学と岩石学をあわせ考えると,地震波イメージはマントル-地殻の温度構造を明らかにするための有効な道具となる.地質学と岩石学に基づいて推定される現在のマントルウェッジの温度構造は,マントルウェッジの地震波速度構造と良く対応している.後期中新世?鮮新世カルデラの地下で起こったであろうマグマの貫入は地殻内に大規模なマグマ溜まりを形成し,地殻内温度構造に影響を与えたと考えられる.この温度構造擾乱の名残は現在も地震学的に検出できる.東北本州弧のマントル-地殻温度構造は火成島弧の発展と関連して発達してきたものと考えられる.