JAMSTEC Report of Research and Development
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原著論文
フィリピン海プレートの3次元形状が南海トラフ巨大地震発生に及ぼす影響
兵藤 守堀 高峰
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2011 年 11 巻 p. 1-15

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抄録

東海沖から四国沖に至る南海トラフでは, 紀伊半島の東側で巨大地震がまず発生し, 同時~数年で西側でも発生する. また過去に起きた3組の巨大地震は, 規模と再来間隔が減少するとともに, 紀伊半島の東西での破壊の時間遅れが徐々に増加している. 近年, この変化のメカニズムに関する仮説が提案され, 数値シミュレーションで検証されつつある. ただし, これらのシミュレーションは屈曲したフィリピン海プレートの3次元形状を平面で近似したものであった. そこで, プレート形状を平面・曲面の両方でモデル化し, 共通の摩擦特性分布を与えたシミュレーションで,プレート形状の影響を検討した. その結果, 3次元形状を考慮したモデルの場合, 南海地震震源域となる紀伊水道では, 応力増加率が大きく低下し, 平面断層で再現できた歴史地震の特徴とは乖離した発生パターンが一部生じた. 一方, 東西の地震のセグメント境界での摩擦パラメタ値の数%の変化によって, 平面断層とほぼ同じ振る舞いが再現されることもわかった. このことから, 南海トラフでの地震発生には, プレートの屈曲に起因する応力変化よりも, セグメント境界の摩擦パラメタの不均質に起因する応力や強度の変化がより支配的であると言える.

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© 2011 独立行政法人海洋研究開発機構
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