抄録
高血圧,心筋虚血は動脈硬化と密接な関連性があるが,慢性心不全の主たる病理学的な原因でもある。脂質異常症は動脈硬化の主たる1つのリスク因子である。このたび,我々は慢性心不全(CHF)患者の脂質プロファイルとBNPとの関連性を検討した。CHF患者(n = 81)と健常者(n = 90)を対象とした。BNPはエンザイムイムノアッセイにより,リポ蛋白プロファイルは陰イオン交換クロマトグラフィーにより測定した。そして,CHF患者の脂質プロファイルとBNPとの関連性を評価した。CHF患者のHDL-Cは健常者に比べ低値であり,VLDL-Cは高値であった。CHF患者のBNPとHDL-C,LDL-C,VLDL-Cは有意な負の相関関係を示した。また,重回帰分析においては,HDL-Cと有意な負の相関関係を示した。これらの結果は,脂質異常症を有するCHF患者の動脈硬化病態の対策において,低HDL血症を考慮して治療することが望ましいと考えられたが,さらなる検討が必要である。